日間賀島の昔話。かしき長者のお話を知っていますか?優しくて暖かくて、かしきちょうじゃはそんな心温まる、素敵なお話です。日間賀島の昔話のうちでも、一番人気です。
そのかしき長者のお話を、主人作の紙芝居形式で、全文ご紹介します。
この画像は、絵の好きな主人が昔作った紙芝居。主人公の顔が、主人の顔にそっくりなところが笑えますがけっこうお気に入りです。
では、はじまり、はじまり~。
① むかしむかし、尾張の国の知多の海に日間賀島という島がありました。男たちは海へ出て魚を取り、女たちは浜で貝をひろったり、わかめを拾って生活をしていました。この物語はその島にすむ、1人の青年のお話です。
② 人は彼のことを「かしき」とよびます。かしきというのはしんまい漁師で船の上で食事を作る人のことをいいます。
そのかしきは心がやさしく、はたらきものでしたが、気の短いせんぱい漁師たちには「のろまなかしき」「のろまなかしき」とよばれていました。
③ 「おーいかしき。しっかりほをおさえとれよ」「おらあはらがへって、あみがひけんがや。かしきめしはできとるのか」「は、はい」漁師たちの仕事はきつい。
いたこ一枚下はじごくともいうて、年中命がけの仕事だ。ちっぽけな船で、荒波にもまれながら、魚を追う。
④ 漁師たちは、力いっぱいはたらくので、ようけめしもたべる。ちゃのこ・あさはん・ひるごぜん・よーざけ・よーはんと一日5度ずつめしを食べる。だからかしきはいそがしい。
「おーいかしき、めしのおかわり」「はよおれのもつげ」「こののろま!はよせな魚がにげてしまうがや」「はいはいすいません」
⑤ かしきはたしかにのろまだったが、ほかの漁師にはない、やさしい心をもっておった。めしのあとかたずけをするたびに、なっぱのくずや、残りもののたべものがたくさんでる。
かしきはそれをきれいに集めると、とっとときざんでおけにいれた。それから船べりへかかえていき、「おイオ、おあがり」と言っては、魚たちにまいてやった。「おイオ」とは魚のことである。
「魚たちのおかげで、おれたちゃくらしていけるんだもんなあ。ありがとう。いっぱいおあがり」
⑥ 船が浜についても、かしきの仕事はいそがしい。「かしき、船あらっとけよ。」「かしき、あしたの朝までに、あみのやぶれをなおしとけよ」
せんぱい漁師たちはかしきに仕事をいいつけておいて、自分たちは、いつも酒をのみに行ってしまう。かしきは夜おそくまではたらき、ねるのはよなかになってしまうのでした。
⑦ 今日も海の上では、かしきが魚たちに残りものをあげています。「おイオおあがり」「おイオおあがり」「たくさんたべて大きくなりな」かしきの声は広い海に、やさしく遠くひびいていきます。
「のろまなかしきめ、一人で何をぶつらぶつらと、となえておるだいなあ」「おイオさまにえさをやっとるんだと」「やいやいこっちのめしもわすれちゃおらんずらな」「おーいかしき、早くめしにしろ~」
⑧ この日は朝から漁をしていても、タイどころか、魚一匹あみにかかってきません。もう日は西にかたむいています。
「これでは殿様にさしだす魚がとれん」 「今日は船でとまることにしよう」「明日もう一度がんばってみよう」そう言って、はやめしをたべ、ねてしまった。
⑨ ふとかしきが目をさますと、波の音がしません。「おかしいなあ」かしきが外に出てみると、船が砂浜にうちあげられているではありませんか。
「あれ、海がなくなった」あたりは水が1てきもありません。「これはたいへんだ」あわててせんぱい漁師たちをおこそうとしましたが、つかれているのか、だれもおきません。
⑩ 夢を見ているのかなあ。かしきは砂浜におりてみました。砂浜は月の光をあびキラキラと金色に輝いておりました。「あれえふしぎだなあ。どうして海がひあがってしまったのかなあ」かしきはなにがなんだかわかりません。
砂を手のひらですくいあげると、ひとつぶひとつぶがキラキラと光っています。「これみんなお月さまのかけらかな。」かしきはあんまりきれいなものだから、おけをとってきて、金色の砂をいっぱいつめた。そして船にもどると、すぐねてしまった。
⑪ 目がさめると、そこには青い海が広がっていました。かしきはゆうべのできごとを、ほかの漁師たちに話しましたが、「あほこけ、かしきめ夢を見よったな。」ばかにして笑うだけで、だれもその話をしんようしません。
そこでかしきは砂の入ったおけをみんなに見せました。そのおけを見るなり「おお金だぞ。金のつぶじゃ。」今しがた笑ったこともわすれ、「かしき、かしき、おれにもわけろ」「こっちへもくれ」とあらそって手を出した。
するといちばんえらい漁師が言った「それは海の神様がかしきにくれたものだ。魚たちに、残りものをあげつづけたかしきにな。それに手を出すと漁師として魚をとることはできんぞ。かしきよ、もらっとけ。
⑫ やがて島にもどると、かしきはおけいっぱいのこがねのおかげで、島いちばんのちょうじゃさまになった。なまえも「かしきちょうじゃ」とよばれ、たくさんの船をもって、幸せにくらしたそうだ。
もちろんかしきちょうじゃになってからも、魚たちにおれいをすることを忘れなかった「おイオおあがり」「おイオおあがり」
やさしいかしきの声は、毎日毎日ひびきわたり、人々はそれを聞くと、とても心がなごんだということです。 おわり
この紙芝居は、かちま荘の階段に、並べて貼ってあります。いつでも見に来てください。「おイオおあがり~」というかしきの声が聞こえるような気がします。
優しい人が、最後に幸せになる。そういうお話が好きです。そういう世の中になるといいですよね。
以前このお話を読んで、日間賀島にどうしても来たかったというお客様がみえました。かしき長者の話で、意気投合しました。(笑)
日間賀島の昔話。かしきちょうじゃ。いかかでしたか?心があったかくなりますよね。
心が温かくなる時間。そんな時間を共有出来たら幸いです。また、たーこブログでお会いしましょう。
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